ARCH ENEMY Live Report from LOUD PARK 11
アンジェラ姐さんは、ドレスなんか着たりしない。
最近の、紅一点女性シンガーを迎えたデスメタルバンドによくある、フロントウーマンをゴージャスに飾ってデス声と美メロの両方を歌わせるような、そういうタイプではない。
衣装は野郎どもにまじって全員黒の特攻服にバンド・ロゴの白い腕章を付け、眼の下には隈取り。お洒落感があるとすれば、左手に付けた真っ赤なリストバンドぐらい。まさに紅一点。もしくは旦那様マイケル・アモットの髪の色に合わせたのか。
そして、もちろんボーカルはデス声一辺倒。
数年前、とある記者会見で「マイクにはエフェクトをかけてあるのか」と尋ねられた際、その時自分の前にあったマイクにエフェクトが掛かっていないことを確認してから、あのデス声で歌い出し、ノーエフェクトを証明し、また自らも心からメタラーである事を明言したというエピソードもある。
5月に新作『KHAOS LEGIONS』が発売され、この10月のLOUD PARKにしてようやくの来日となったアーチ・エネミー。新作からの曲でいきなり攻めた後、アンジェラが話し始めた。「また日本に来られて嬉しい。あんなに大きな出来事が起こったおかげで、私たちは本当に心配していた。あなた達がまだメタルを愛していてよかった。これからも闘い続けてほしい。だって、まだ終わってないでしょう。今はいろんな事を忘れて、楽しんで」
暴虐的メタル・チューンと、マイケル&クリストファー・アモット兄弟が奏でるメロディックなソロ、これがアーチ・エネミーの魅力。トリヴィアムもそうだけど、こちらのメロディーははもっとクラシカルなスタイルだ。シェンカー好きのマイケルが、シェンカーゆずりのVシェイプ(いや、シグネチュアだけど)で哀愁あふれる旋律を弾けば、クリストファーはわりとギンギンな音でテクニカルに指板を駆け巡るタイプのアルペジオで聴かせる。
またアンジェラが話しかけた。「今、世の中には信じられない事柄が多い。日本の政界もそんな状況になってしまった。疑問を持っている人も多いでしょう」万単位いるはずのアリーナ席の、ごく一部から聞こえる賛同の怒号。
「何が正しいのか疑問を投げかけることを、これからも続けて。そして、"Black Flag”を掲げよ」
新作からの曲、「Under Black Flags We March」が始まった。
本気だ、このバンドは。
音を聴いてそう思った。
最近ではウェブでの人間同士のコミュニケーションが密になり、政府への不満を表立って言える人も増えてはきたけど、正直話せと言われるとちょっと逃げたい、触れたくない、そういう人は多いと思う。公共の場で自分の国のことを意見をもって語れる日本人がどれぐらいいるのか。例えば自分がアンジェラなりメンバーの一人で、ステージに立って同じシチュエーションになったら、そんな話題避けると思う。そこが特に外国人はすごくはっきりしてる所で、ちゃんと自分の意見を持っているし、それを堂々と述べられる。
ソロ・セクションでアンジェラが、バンド・ロゴの描かれた大きな黒い旗を振りかざしてステージを横断していた。
私は、血や死や殺戮といった歌詞やコンセプトを歌われるのは嫌い、だからデスメタルは基本的に嫌いだけど、アーチ・エネミーはその中でもこうやってライヴを心待ちにするほどのバンドの1つ。何か気概(危害も/笑)を感じられる熱い音楽を、体を張って、真剣勝負で叩きつけてくれるバンド。
絶対やってくれると信じていた、「Nemesis」は最終曲だった。
近くにあったサークル・ピットが大きくなった。
メタルの曲を聴きながら感無量で純粋にヘッドバンギングできたのは、いったい何年ぶりだろう。
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