富士山日記その2






たしか六合目付近の、登山道と下山道が交わる分岐点で休憩。持ってきた塩飴を舐める事にした。「よーく深呼吸して。さあ、行きますよー」とガイドさんが先頭に立ったそこは、奥にあった広い道ではなく…

岩場!

え! そこ通るの!?

面白くなってきた。歩幅とか、ひざを上げる距離をなるべく小さく、という事を気にかけながら進む。休憩をちょこちょこはさみながら…。


岩場ふたたび

「あの人には話をしなくちゃいけないねえ」
とある休憩の時に、ガイドさんが最後尾の人の所へ向かって降りていった。その方は、残念ながらリタイアしてしまった。荷物も、他の人が持ってたぐらいだからね…


まいぐっず


並び順は交代制だったけど、進むに連れて崩れてきたので、今度は最前列あたりにつくことにした。こうすると、休憩時間が決まっているので早く付けば長く休める。あとからくるとちょっとしか休めないから、みんな前に出たり後ろに下がったりしてペース配分。「だから、真ん中が一番ちょうどいいんですよ」なるほど。


深呼吸が大切。長く休むと体が戻っちゃうから、休憩はほどほどに。チョコやお菓子、バナナなどでHPを回復。


雲におおわれて下の景色が見えない。

カップルで来てた女の子が「ラピュタだねえ」と言った


日差しが強い

実はこの日の天気予報は夕方から悪くなるとの事。朝、既にその連絡があり、「雨に叩かれないうちに上がりましょう」と言われていた。
ここまでは良い感じだったけど、ある時空に虹が見え、ちょっと歓声が上がった。「虹だと言っても喜んじゃいけないんだけどね。天気が変わりやすいですから」と、ガイドさんが言った。「それに、もう3時だし」

高度が上がって寒さが増したので、毛糸の帽子をかぶった。レンタル屋さんから「ウインドブレーカー代わりになります」と言われていた雨具の上着も着用。防御力アップ。

山を降りるとただのおじさんだけど、山の上ではお兄さんですというガイドさん、このツアーの名付け親でもある。つまりこのツアーの第一人者である。ささっと初心者の私達を先導し、(きっと的確に)休憩をとり、普段動いてないOLさんたちはよく足を叩いてくださいね、さすっちゃだめですよとアドバイス。刺激を与えると良いんだとか。1対1で話すことはなかったけど、ベテラン中のベテランに出会えてとてもラッキーだ。

山のお兄さん


砂利といってもここは火山。全部火山岩だ。なんか、色も形もはっきりしてていい。「俺は赤い」「俺は黒だ」みたいな(?)。
赤い


ふもとの恵みを山頂で




はしっこに整列休憩







登れば登るほど空気が薄くなるので、頭が痛いとか吐き気がするとか、そういった高山病の症状が出ないかな、と思ったけど、私は全然心配ない。たまに耳がつーんとするぐらいで、どこまでも行けそう(笑)。景色もいいしね。色が、きれい。8合目に向かうと休憩の数も増える。風が強まり、空が近くなり、雲は下からもくもく。地面を撫でるように雲が上がってきた。


休憩では、写真を撮り合ったり、携帯酸素を吸ったり。密度が濃く、コンパクトなサイズの携帯酸素スプレーは中身が早くになくなってしまったようだった。そんな事もあるんだー。




また、登る。また、岩場。雲。風、強くなる。
地上では溶けかけていたチョコレートも、ここではカチカチ。なんだ、もっと持ってくればよかった。


隣で、かなり息を切らしつつも雲海にカメラを向けていた男性に声を掛けた。「写真撮りましょうか?」「いえ、いいです」「そうですか。大丈夫ですか?」「結構キツイです」ポケットに手を突っ込んで前かがみに揺れながら遊んでた私を見て、「女性なのに凄いですね」凄いかどうかはともかく、余裕はあった。持久力にはちょっと自信がある。膝を上げるのが辛いというので、先日富士山サイトで勉強した、歩幅を細かくするアドバイスを伝えた。なるほどとつぶやいたその方は「ほら、幼稚園児でも登ったでしょう。俺も負けとられんですわ」と気合を入れ直していた。

時折、上から人が降りてくる。そこの外国人さん、ジーパンに斜めがけカバンで新宿を歩くような格好だ…そういうものなのか。

「寒いですね」
こういう時、こういう場所では、思ったことをそのまま、知らない人に声をかけると楽しい。「写真撮ってもらえますか?」「いいですよー」
「ここをタッチすればいいんですよね」「あれ? ムービーになってる」「あ、雲がまぶしすぎて顔が暗くなってしまいました」「そしたら、こっち(岩場)でいいですよ」

写真タイム

雲海
地上でもおいしいけど、山の上でも絶品
みろ、雲が綿のようだ(ラピュタなう)


ガイドさんが上を見上げて指差す。「あそこの黄色い文字が見えますか?あそこまでいきますよー」






あ、あそこかい!


ともかく、ゴールが見えて、みんな気合が入る。「目標がないとねえ」「ねえ」


場所は本八合目、ビュービュー風が吹く。頭のすぐ上に山小屋がある場所でさらに休憩を挟み、「この上の建物が…」と説明が始まるやいなや、山小屋の窓がガラリと開いた。

「何してるんだー、早く上がってきなさーい!寒いから! 早く早く」

(つづく)

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