マイク・ポートノイ脱退と今後のドリーム・シアターについて
会社の非常階段は、喫煙コーナーになっている。
お昼時、歯磨きに行こうと通りかかると、煙草を吸っていた音楽好きの先輩がふだん言うはずのない言葉をかけてきた。
「精神的に大丈夫?」
私がドリーム・シアター好きと知っての質問。マイク脱退の件については、既に、お友達と携帯でも情報交換し合い、意見を伝えた後だった。
でもそれで、淡々としていた気持ちがちょっと揺れ、タバコの副流煙を真正面からくらいながら、時の経つのも忘れて話し込んだ。
なんか顔が気になるから。
そんな理由で、ヤング・ギターに載っていたジョン・マイアングの写真を見てドリーム・シアターを聴き始めた。結果、世界が一変した。
好きな人が同じ学校に通ってたから。
極端にいえばそんな理由で、バークリーで勉強する事を決めた。でもそれは、私の人生にとって大切で、意味のある選択だった。
かつての熱狂さはないけど、ファンとして、いろいろ考えた。
初の2枚組『SIX DEGREES INNER TURBULENCE』(02年)やメタル色を全面に出した『TRAIN OF THOUGHT』('03年)などの頃から見切ってた人も多いけど、私にとってはどれも新しいドリーム・シアターで、どれも感動した。いろんな側面が見え、面白いと感じたから。だから、ボストンにいる間はNYへも必ず観に行った。会場にたどり着けなかったけどコネチカットもチケットを買った。東京の渋谷公会堂も、それを口実に夏の一時帰国を決めた。単純に、好きなんだ。
でも、『SYSTEMATIC CHAOS』『BLACK CLOUDS & SILVER LININGS』など、最近のアルバムについてはいつも思っていた。この後、どこへ行くのだろう。特に最近の2作品は、音楽的に飽和状態という感じがしていた。真剣に聴くのは最初の3日ぐらい(もちろん、好きなのでここで大体曲は憶えてしまえる)。昔のリフやメロディーをいい感じに組み込んで、相変わらずテクニカルで、展開が多彩で。ペトルーシのソロも感情のこもったものが多く、より成熟した感じで昔より好きだ。だけど、なんか、総てが完成されてしまってる。スリリングなフレーズはある。だけど例えば『IMAGES AND WORDS』('92年)『AWAKE』('94年)『SCENES FROM A MEMORY』('99年)のようなアルバムに対する圧倒的な感動がない。単純に好き…だけでは物足りなかった。
だからなのか、マイク脱退の報せには、一瞬驚いたけど同時に納得した。
問題は、そのまま予定通り進み続けると言った残りのメンバー。
ドリーム・シアターは、ボーカリストとキーボードの交替はあったけど、核となるバークリー組の3人が抜ける事はなかった。しかもマイクは、リーダー的存在。人をまとめ、コンセプトをまとめ、ドラムを叩いてたまに歌う。
余計なお世話で悪いけど、彼らの経済面を推測すると、マイクはサイド・プロジェクトが山ほどあるのでこのままどこででもやって(食べて)いける。ペトルーシとラブリエもソロ・アルバムを出したりたまにサイド・プロジェクトに参加したりしているので、活動の場はある。ジョーダン・ルーデスに至っては天才っちゅうか魔法使いなので、ソロ作品以外にも理論や演奏を教えるなり楽器やアプリの開発なり、引く手あまたの人材だ。
だけどジョン・マイアングは、現在のところサイド・プロジェクトが動いていない。そして性格上、どうみてもバンドのベーシストで、ゲディ・リーやスティーヴ・ハリス、スティングのように目立つ事はしないと思われる。そして、メンバー全員平均3人の子持ち。だから、やはりバンドがなくなるわけにはいかない。リーダーシップは、ペトルーシが中心になって頑張ってくれるはずだ。
しかし、例えばプレイ&作曲面。一体誰を新しいドラマーに連れてくるのか、不思議でならない。何しろ、マイクのドラム・キットの数の多さは半端ではない。それを凌ぐのは例えば超絶テクニカルなテリー・ボジオかな。じゃあボジオに叩いてもらったら? 「Metropolis」ならまだいいけど、「Another Day」的なバラードも叩く姿、想像…できる?
ラッシュのニール・パートは? 彼はドラミングよりも精神性が複雑だ。それにマイクが悔しがるかも(笑)。自分のドラム・ヒーローが元バンド・メイトと演るなんて。
冗談ぬきに、”ドリーム・シアターのドラマー”を一体誰が務められるのだろう。現時点では、残されたメンバーを含め、世界中のファンが首をかしげているはずだ。
マイクは休養の後、戻ってきたいと言っていた。当たり前だ、結成してからずっとかわいがって来続けた自分のバンドを見捨てるつもりはさらさらない。解散の危機だって何度となく乗り越えてきた。
でも、バンド側はこのまま進み続ける事にした。
どんなに好きでも、愛していても、時には距離が必要な事もある。つい言い過ぎて構いすぎて、うっとうしがられてしまう事がある。
でも最近は、時がたてば再結成しちゃう現象が定着したから、いつかまたこのメンツで…という可能性もない事はない。その時マイクはきっと、新しいものを持ってやってくるだろう。ドリーム・シアターを新しいものにしてくれるだろう。だけどアスリートのようなテクニカル・シュレッドをガンガンやってのける人達が、例えば10年後に再終結できるのか? もう50代になっちゃうよ。そりゃ、AC/DCは永遠にロックし続ける。キース・リチャーズなら70歳になっても車いすに乗って弾けるかもしれないけど、この人達の作ってるプログレ・メタルはそういうわけにはいかない。
今、ドリーム・シアターの音楽は変わる必要があると強く思う。だから、揺るぐはずのない鉄壁のラインナップが揺らいだというこの状況は歓迎したい。どう変わるのか、それを受け入れる事ができるのか、それはその時が来ないとわからないし、ネガティヴにとらえるつもりはない。
今でも名盤は『IMAGES AND WORDS』だという人は大勢いる。それはそれで良い。多感な時期を過ごした青春の思い入れが詰まってたりするから、人それぞれ。私も一般的に問題視される事が多い『FALLING INTO INFINITY』('97年)が大好きだ。リアルタイムで高校生だったから。
でも、誰だって進化したいだろう。今が一番良いと思いたいだろう。いつでもワクワク、刺激を受けながら音楽を作り、個性を打ち出し、自分も周囲も感動させてもっともっとハッピーになりたい。去年と今年は違う。昨日と今日だって違う。同じ事なんか起こらない。全く同じものは出来ない。
進み続ける5人を見て行きたい。
++++Now playing.... The Spirit Carries On / DREAM THEATER ++++
お昼時、歯磨きに行こうと通りかかると、煙草を吸っていた音楽好きの先輩がふだん言うはずのない言葉をかけてきた。
「精神的に大丈夫?」
私がドリーム・シアター好きと知っての質問。マイク脱退の件については、既に、お友達と携帯でも情報交換し合い、意見を伝えた後だった。
でもそれで、淡々としていた気持ちがちょっと揺れ、タバコの副流煙を真正面からくらいながら、時の経つのも忘れて話し込んだ。
なんか顔が気になるから。
そんな理由で、ヤング・ギターに載っていたジョン・マイアングの写真を見てドリーム・シアターを聴き始めた。結果、世界が一変した。
好きな人が同じ学校に通ってたから。
極端にいえばそんな理由で、バークリーで勉強する事を決めた。でもそれは、私の人生にとって大切で、意味のある選択だった。
かつての熱狂さはないけど、ファンとして、いろいろ考えた。
初の2枚組『SIX DEGREES INNER TURBULENCE』(02年)やメタル色を全面に出した『TRAIN OF THOUGHT』('03年)などの頃から見切ってた人も多いけど、私にとってはどれも新しいドリーム・シアターで、どれも感動した。いろんな側面が見え、面白いと感じたから。だから、ボストンにいる間はNYへも必ず観に行った。会場にたどり着けなかったけどコネチカットもチケットを買った。東京の渋谷公会堂も、それを口実に夏の一時帰国を決めた。単純に、好きなんだ。
でも、『SYSTEMATIC CHAOS』『BLACK CLOUDS & SILVER LININGS』など、最近のアルバムについてはいつも思っていた。この後、どこへ行くのだろう。特に最近の2作品は、音楽的に飽和状態という感じがしていた。真剣に聴くのは最初の3日ぐらい(もちろん、好きなのでここで大体曲は憶えてしまえる)。昔のリフやメロディーをいい感じに組み込んで、相変わらずテクニカルで、展開が多彩で。ペトルーシのソロも感情のこもったものが多く、より成熟した感じで昔より好きだ。だけど、なんか、総てが完成されてしまってる。スリリングなフレーズはある。だけど例えば『IMAGES AND WORDS』('92年)『AWAKE』('94年)『SCENES FROM A MEMORY』('99年)のようなアルバムに対する圧倒的な感動がない。単純に好き…だけでは物足りなかった。
だからなのか、マイク脱退の報せには、一瞬驚いたけど同時に納得した。
問題は、そのまま予定通り進み続けると言った残りのメンバー。
ドリーム・シアターは、ボーカリストとキーボードの交替はあったけど、核となるバークリー組の3人が抜ける事はなかった。しかもマイクは、リーダー的存在。人をまとめ、コンセプトをまとめ、ドラムを叩いてたまに歌う。
余計なお世話で悪いけど、彼らの経済面を推測すると、マイクはサイド・プロジェクトが山ほどあるのでこのままどこででもやって(食べて)いける。ペトルーシとラブリエもソロ・アルバムを出したりたまにサイド・プロジェクトに参加したりしているので、活動の場はある。ジョーダン・ルーデスに至っては天才っちゅうか魔法使いなので、ソロ作品以外にも理論や演奏を教えるなり楽器やアプリの開発なり、引く手あまたの人材だ。
だけどジョン・マイアングは、現在のところサイド・プロジェクトが動いていない。そして性格上、どうみてもバンドのベーシストで、ゲディ・リーやスティーヴ・ハリス、スティングのように目立つ事はしないと思われる。そして、メンバー全員平均3人の子持ち。だから、やはりバンドがなくなるわけにはいかない。リーダーシップは、ペトルーシが中心になって頑張ってくれるはずだ。
しかし、例えばプレイ&作曲面。一体誰を新しいドラマーに連れてくるのか、不思議でならない。何しろ、マイクのドラム・キットの数の多さは半端ではない。それを凌ぐのは例えば超絶テクニカルなテリー・ボジオかな。じゃあボジオに叩いてもらったら? 「Metropolis」ならまだいいけど、「Another Day」的なバラードも叩く姿、想像…できる?
ラッシュのニール・パートは? 彼はドラミングよりも精神性が複雑だ。それにマイクが悔しがるかも(笑)。自分のドラム・ヒーローが元バンド・メイトと演るなんて。
冗談ぬきに、”ドリーム・シアターのドラマー”を一体誰が務められるのだろう。現時点では、残されたメンバーを含め、世界中のファンが首をかしげているはずだ。
マイクは休養の後、戻ってきたいと言っていた。当たり前だ、結成してからずっとかわいがって来続けた自分のバンドを見捨てるつもりはさらさらない。解散の危機だって何度となく乗り越えてきた。
でも、バンド側はこのまま進み続ける事にした。
どんなに好きでも、愛していても、時には距離が必要な事もある。つい言い過ぎて構いすぎて、うっとうしがられてしまう事がある。
でも最近は、時がたてば再結成しちゃう現象が定着したから、いつかまたこのメンツで…という可能性もない事はない。その時マイクはきっと、新しいものを持ってやってくるだろう。ドリーム・シアターを新しいものにしてくれるだろう。だけどアスリートのようなテクニカル・シュレッドをガンガンやってのける人達が、例えば10年後に再終結できるのか? もう50代になっちゃうよ。そりゃ、AC/DCは永遠にロックし続ける。キース・リチャーズなら70歳になっても車いすに乗って弾けるかもしれないけど、この人達の作ってるプログレ・メタルはそういうわけにはいかない。
今、ドリーム・シアターの音楽は変わる必要があると強く思う。だから、揺るぐはずのない鉄壁のラインナップが揺らいだというこの状況は歓迎したい。どう変わるのか、それを受け入れる事ができるのか、それはその時が来ないとわからないし、ネガティヴにとらえるつもりはない。
今でも名盤は『IMAGES AND WORDS』だという人は大勢いる。それはそれで良い。多感な時期を過ごした青春の思い入れが詰まってたりするから、人それぞれ。私も一般的に問題視される事が多い『FALLING INTO INFINITY』('97年)が大好きだ。リアルタイムで高校生だったから。
でも、誰だって進化したいだろう。今が一番良いと思いたいだろう。いつでもワクワク、刺激を受けながら音楽を作り、個性を打ち出し、自分も周囲も感動させてもっともっとハッピーになりたい。去年と今年は違う。昨日と今日だって違う。同じ事なんか起こらない。全く同じものは出来ない。
進み続ける5人を見て行きたい。
++++Now playing.... The Spirit Carries On / DREAM THEATER ++++
あの「Metropolis」の最後の1音が、マイキーの最後の1音だった。
ReplyDelete結果的になにかを予言したかのような、ほんとうに印象的な言葉になりましたね。
素晴らしい先輩をお持ちですね
ReplyDelete自分も昨日は精神的にダメージを受けました…
仮にマイクが出戻りしたところで
それは元のドリームシアターとは
ちょっと違うような気がしますし、
次のアルバムは複雑な心境で
迎えることになりそうです。
こんばんは、Megさん。
ReplyDelete僕はシアターの大ファンでしたが、Megさんがいう通り、Systematic Chaosの時から、「ん!?」と思い始めて、確かに凄い演奏やけど、Images and Wordsの時のような心に訴えかける内容ではないなぁと感じていました。
マイキーからのコメントの通り、飽和状態とは正しくその通りであり、マイキーもそれを察して、バンドの休止を提案したけど、受け入れられずに脱退という結末に至ったのも、無理はないですよね。今はまだ現実を受け入れられませんが、一音楽ファンとしてマイキーとシアターがどういう風に進んでいくか、じっくり見たいと思います。
最終的にはマイキーは戻ると思いますが…。
>白頭老さん
ReplyDeleteぐわー…
そういうことになりますね…
なんていうことだ…
>見ず知らずのあなた
ご意見、ありがとうございます。
そうですよね、何たって、核となる人が抜けてしまっては、根本が変わってしまうでしょうね。
一体何がくるのか、想像できませんね…
>Tomoさん
ありがとうございます。心に訴えかける何か、そこが肝心な所なんですよね。
うん、そうですよね、また一緒にやらないわけはないと思います…
ほんとに、マイクのいないDTの想像がつかない、ですね。これまでのようなMetropolisは聴けない(笑)
そういえばイット・バイツは、肝心要のフランシス・ダナリーがいなくなったけど、新しく入った人が最強に盛り上げてバンドを引っ張り、ファンからも大いに指示されているらしい、と聞きました。そんな事も、DTに起こりうるのかなあ。フォロワーはたくさんいるだろうけど…
どもども。DTデビュー時~のファンです。
ReplyDelete先月のサマソニでDTを15年ぶりに観て、感慨深かったので、マイキー脱退は寂しく思う反面、そりゃ同じバンドで何十年もやってたら煮詰まるだろうし...表現を追求する人達にマンネリはあり得ないし...と妙に納得している面もあり、今後の両者の活動を楽しみにしています。
私は鍵盤担当だったので、Kevin mooreの脱退時がかなりショックだった(普段寡黙なマイアン先生もその時ばかりは相当Kevinを説得したのに...本当に落ち込んだと言ってましたね)のですが...。
にしても、メグさんのDTへの入れ込み具合は半端無いですね。
私もマイアン先生大好き(というか、恐ろしくカッコイイ!!!)と思います。
はじめまして、書き込みありがとうございます。デビューからとは相当長い期間をDTと共に過ごされてきたのですね! 素晴らしいですm(__)m
ReplyDeleteケヴィン脱退は、最初の大きな衝撃だったんですよね。私も、ケヴィンがいた時のアルバムは大好きです。ファンになった時は既にデレク時代だったので実感が少ないのですが、あれよりあり得ない事が起こるのか!という感じでしたよね、きっと。
そういえば、私はデレク脱退の時が最初の衝撃でした…
それに、みんながそれを好意的にとらえてた事も驚きました(笑)。今でこそ大きな歴史を鑑みるとよくわかりますが、高校生というのはそういうもんかな。
マイアング先生、まだまだ頑張ってるようなので今後が楽しみですね♪ 最後に聴いたメトロポリスのソロ、これまでで最強でした。リフも良いですが、また新たな超絶ソロをやって欲しいですね。