チック・コリアとひろみさんの武道館公演を観た。 ピアノが2台とは思えない驚異的な音楽に包まれた2時間。 何よりも、始まった瞬間から2人の音色がぴったりなのに驚いた。メロディーを交互に弾いたとしても切れ目がない。どっちが弾いてるのか分からない。もう既に出来上がっている、大きな一体感。 もう1つの肝はやっぱりダイナミクス。嵐のような激音から、羽毛みたいな小さくて柔らかい音へ瞬時に移る(もちろん、観てる方も取り残されないで一緒に連れてってくれる。わかるかな…)。1分1秒、1音ずつに表情豊かな魂が込められている。 ステージの演出も良かった。中央にはシンプルに2台のピアノが向かい合って、両脇に巨大なスクリーンで2人の顔や手元、全景などがゆっくりと映されていて、とってもきれいだった。 ジャズの事はあまり詳しくないから、理論的にはもっと面白い事をやってるんだろうけど、観てて分かったし面白かったのはリズムの掛け合いかな。片方がソロとってたり、速いフレーズを弾きまくったりする時に、リズムをとる側が2拍3連みたいなのをぶつけたりして。それをにこにこ笑いながら、または「こんなのどう?」「これどうする?」って、お互いの顔や音が訊いてる感じ。 他にも、フレーズが入れ違ったり、一緒に動いていったりずらしたり、もう何でもかんでも自由自在なのにぴったりと息が合っていて、本当に楽しそうで、ただただ目が離せない光景だった。 途中でチックがタンバリンを叩き出した時に、ひろみさんが高校時代に確か同じようにタンバリンを叩かれて、ソロを弾かされた…確かそんなエピソードがあったよね…? それを思い出した。今日はそのタンバリンを聞きながら、歌心たっぷりの見事なソロを弾いてた。 最後に「Old Castle, By The River, In The Middle Of A Forest」('05年『SPIRAL』)のイントロがゆっくり始まった。うわー嬉しい。これも原曲のトリオとはまた違って、ピアノのみのアレンジ。ジャズはアレンジしてなんぼだから、大好きな曲が今日はどんな風に演奏されるのかと思うと、本当にわくわくする。結局、チックとの共演だけあって全体的にジャズ色や落ちついた印象が強かったけど、この曲はかなりハジけてた。 特にソロではポイントが2つ。バンドの時みたいに壮絶な弾きまくりフレーズがガンガン入って...